世代を超えた風越男子の四方山話
昨年のFIFAワールドカップカタールでの日本代表の大活躍も記憶に新しいところですが、飯田下伊那地域を拠点とするサッカークラブ「アザリー飯田フットボールクラブ(以下アザリー飯田)」も飛躍の年となり、創立27年で悲願の北信越フットボールリーグ2部への昇格を決めました。これは飯伊のチームでは初の快挙です。
アザリー飯田には風越同窓生も多く在籍しており、春に開幕する新たなステージでの戦いに向け、このタイミングでいろいろお話をしながら親睦を深めたいと思い、本部常任理事有志はアザリー飯田の会長さんはじめ風越同窓生選手の皆さんとの親睦会を企画し、去る1月13日(金)、白山町「とうちゃん」に於いて開催しました。
当日参加者は、アザリー飯田男子トップチームから上沼直樹さん(会長/監督兼FW・風越45回生・伊賀良支部)、黒田真史さん(GK・同62回生)、塚本潤さん(MF・同69回生)、常任理事から橋本義哉(同33回生)、宮下将吾(同46回生)、岡本恒和(同34回生)。
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アザリー飯田のこと
岡本(幹事)/本日は風越高校の同窓会ということで、お忙しい中お集まりいただきありがとうございます。昨年はワールドカップ日本代表の活躍、地元ではアザリー飯田が北信越リーグ2部への昇格を決め、サッカーの嬉しい話題が続きました。
さて、まずはなによりアザリー飯田の皆さん、来季の北信越リーグ2部への昇格、おめでとうございます!
アザリー飯田の皆さん/ありがとうございます!
岡本/本日はざっくばらんにアザリー飯田のこととか、風越男子同士、諸々の話しが楽しくできればと思いますのでよろしくお願いします。ところで塚本さん、お若いですね。
塚本/23歳です。
上沼/塚本は若いのにすでに得点王を取っちゃてるんですよ。先が怖いですよ(笑)。北信越リーグ2部への昇格を懸けたチャレンジリーグ最終戦のPKで、昇格を決めた男です。
常任/すごい!
黒田/塚本はスケボもやる新婚さんなんですよ。
岡本/やっぱり運動神経いいんだ。新婚さんなのに週末(今日)来てくれてありがとう。
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橋本/来季からの北信越リーグっていうのは何チームあるの?
上沼/僕らが所属するリーグは8チームです。1部も2部も8チームずつで各チームとホーム&アウェイ戦の2試合やるんです。今度は北信越(長野・新潟・富山・石川・福井の5県)なので、遠征して戦います。
岡本/移動の面でも県リーグよりさらに大変になりますね。リーグの仕組みはどんな感じなんですか?
上沼/そうですね。…それで上位2チームが1部へ昇格して下位2チームは地域リーグに降格するという仕組みです。僕たちの長期目標はJFL(日本フットボールリーグ)昇格ですが、まずは北信越リーグ2部に残留することを目指します。
宮下/なんでアザリーって言うんですか?
上沼/僕の前の代表が考えて作ったんですよ。エンブレムも。フランス語でツツジ(*飯田市の花がミツバツツジなことから)のことをアザレア…そこからアザリーと言う造語です。
高校時代のこと
岡本/ところで上沼さんと宮下さんは、同じくらいの歳じゃないの?
宮下/…私が1個下でしょうかね、上沼さん何組でしたか?
上沼/僕は3組…だったかな、縦の会ありましたよね。
宮下/あ、私も3組です。会ってますね。縦の会で。初めましてじゃないですね!
上沼/そうですね!文化祭とかで縦の会、よくやりましたよね。当時は入学式が終わって、姫宮に行ってから縦の会やって先輩に会うという…
黒田/“たてのかい”ってなんですか?
宮下/え? “縦の会”、なかった? 1組ライン、2組ラインの…3年から1年の会。
上沼/塚本の時もなかった?
塚本/なかったです。
年上一同/今ないんだ
宮下/やっぱり、世代が変わると…もう風越登山・強歩大会とか、もうないですよね。
黒田/強歩大会ありました。風越登山じゃないですけれど。高森ですね。
宮下/強歩大会も、私が1年の時は登山で2年の時から高森に変わったんですよ。
塚本/僕の時も強歩大会、高森でした。
宮下/もう家政科はありませんでした?
黒田/僕が…1年の時に家政科がなくなったんです。
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橋本/…黒田さんはうちの三男坊と一緒で…
黒田/はい、分かります。似ています!
岡本/(笑)そうなんだ、親子の世代違いだ。
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宮下/そもそもなんですが、皆さん高校の頃はもちろんサッカー部ですよね?
アザリー飯田の皆さん/はい、そうです!
上沼/僕らの頃は県大会へは余裕で行けてました。
黒田/僕らの頃も二つ上が県ベスト4でした。
常任/なかなか強いんだね!
やんちゃだったあの頃
橋本/当時バイク通学がしたくてさ…後に色々あったんでだんだん厳しくなってしまったね。
岡本/え? 鼎からバイク?(笑)
宮下/その皺寄せが下の世代に…(笑)
私もバイクに関してはやんちゃなことをいっぱいして来ました…
(*詳しくはリレートークで)
黒田/……!そんなやんちゃで、その…いつから更生して(笑)弁護士になったんですか? …普通じゃないっすね。
…僕、前期選抜で風越入ったんですよ。中学の時、サッカーと生徒会長もやってたんですよ。
岡本/生徒会長!当時は普通科に前期選抜があったんだな。
黒田/ええ、なにしろ内申点で勝負するしか…(笑)…面接で将来の夢を聞かれました。それで「僕は絶対筑波(大学)に行きます!」って言ったんですよ。
一同/ほー!そしたら?
黒田/「すごいビジョンがあるんですね!」と。それでも入学したら赤点ばっかりで…部活の先生に試験の前に「部活には出させません!」と言われて、研究室で勉強という…(汗)
橋本/赤点もだけど、青点って知っとる? 赤点の半分! 俺も物理でもらっちゃって(笑)。でも勉強とか部活だけじゃなくていろんなことができるっていうところ、風越の一番いいところだと思うんだよね。幅が広いとこ。
宮下/平和だしね。
岡本/あと驚いたんだけど、今、県内で制服(男子の学生服と女子のセーラー服)の学校は風越だけかも、ってことらしいんだよ。ポロシャツもあるけど。
黒田/えー!本当ですか?!
橋本/時代で色々変わっていくけど、髪型も息子たちがいた野球部っていえば坊主頭で…サッカーは昔から自由だったと思うけど。
黒田/僕らの時代も野球部は坊主頭でした。
橋本/今は違うもんね。
塚本/坊主頭にしたことはないです。
黒田/僕は大学時代、寮生活だったんですけど、ちょっと色々やらかしまして坊主頭にさせられました。
一同/大学で!(笑)
橋本/…僕は高校時代は登山部で、大学もワンダーフォーゲル部で。山や大学でのいろいろな経験、先輩からの言葉、後輩への言葉って一生忘れんよなあ。
(*詳しくはリレートークで)
Jリーグ開幕前・飯田で
岡本/上沼さん、風越高校卒業後にサッカーでブラジルへ行かれたんですよね? あのカズ(✳︎ 三浦知良/元日本代表、今なお現役のレジェンド)と同じですね?
上沼/はい、僕はブラジルへ行って。カズのお父さんが斡旋している会社でした。
宮下/カズとかラモス(*ラモス 瑠偉/元日本代表)とか北澤(*北澤 豪/元日本代表)…飯田に来ましたよね。まだJリーグ始まる前。僕はカズってまだ知らなくて…でも、もうすごい人気で女の子たちがキャーキャー言ってて。
上沼/泊まるところも知ってました。先輩に飯田サッカー協会の息子さんがいたんで。
黒田/え? 直で?(カズたちに)会ったんですか?
上沼/そうそう。
一同/えー!
宮下/もう手の届くところに歩いていた訳ですか? あの松尾(グラウンド)の?
上沼/そうですね。武田さん(*武田修宏/元日本代表)が約束してくれて。「これ(観戦席にいる)お前たちに投げるから」って。ホントに投げてくれて。当時マスコットボールを投げてたんですよ。地元のサッカー協会を通じて来てくれてたんですね。
ブラジル留学のこと
岡本/上沼さん、高校卒業してすぐにブラジルに行ったんですか?
上沼/はいそうです。
岡本/ブラジルへ行くっていう…その意思、そして本当に行くという行動力…
橋本/お金は?
上沼/そこは親に出してもらいました。
橋本/ブラジル行く上沼さんもすごいし、いいだろう!って行かせる親もすごいよなー!
一同/すごい!
上沼/…18歳から20歳のカテゴリーのチームがあって、そこで2年いました。
黒田/言葉は…ポルトガル語とか?
上沼/そうだね。だいたい日常会話くらいなら(大丈夫)。今でも友達から電話が掛かってくるんだよ。Facebookとか今あるじゃん。掛けてくるんだよ、とんでもない時間に!(笑)
一同/時差〜(笑)
橋本/ブラジルは遠いわ、30何時間かかるんじゃないの?
上沼/ブラジルまでは1日半かかりました。途中、ロサンゼルスで給油してからブラジルへ…若かったから良かったですねー。
黒田/それって稼げるんですか? 一応、給料とか貰えるんですか?
上沼/もらえない。プロ契約すれば貰える。まあ、学校のような感じだね。お金はこっちが払って、それで所属するチームは振り分けられる。
黒田/じゃ、それでたまたま強いチーム(*上沼さんは強豪チームに所属していた)に振り分けられたと。
上沼/最初はそう。でも移籍したいってことなら移籍していく。各国から集まっているけど日本人も多いチームだったんだ。
黒田/チームメイトの仲間でプロになった人はいるんですか?
上沼/あー、仲間内ではいないね。プロになったのは。
宮下/それは厳しい世界なんですね。
塚本/やっぱりブラジル人は上手いんですか?
上沼/上手い。もう別格。
岡本/それは何なんですかね?
上沼/それは文化の違いで、ハングリーさが違う。食べていくために。もうそれだ!と感じました。本当に生活がかかっているんで、彼らは。僕と同じ世代の奴らでも、入ってきて3日でクビ切られちゃったりとか。あるんで、必死。
一同/3日…
上沼/せっかく仲良くなっても、もう1、2週間で次のチームに行くんだ、プロになるんだ!っていう、決意が違う。
黒田/出て行ったらもうそのチームには戻れない?
上沼/そうそう。もう、そういう人間との差っていうのは無理でしたね。一生懸命自分を…こうハングリーさを出すためにやるんですけど。日本人って、スパイクがどうのとか…、自分も向こうのスパイク履いたり、そんなことするんですけど、もう根本が違います。
黒田/でも練習量は同じなんですか?
上沼/それは一緒にやるから…同じ。
岡本/フィジカルな違いっていうのは?
上沼/劇的に違います。
一同/えー!
宮下/向こうの、彼らは日本から来てる人に「お前らいいよな、日本から来て…」みたいなのは?
上沼/言われましたし、やられましたね。喧嘩も売られちゃうし。
…で、20歳までっていうのがリミットで、それまでにプロになることを目指すんです。その約束でしたし。
宮下/2年で結果を出せと。それで帰り際、帰国して?
上沼/はい、帰国してヴェルディ川崎(*93年J1初代チャンピオンチーム)のプロテストを受けました。
黒田/えー、すごっ!
上沼/そこでまたカズたちに再会しました(笑)。その後も他のチームのプロテストを受けました。
橋本/…チャレンジするってことがすごいことだよねー。だって普通そこまで行かないもん。…でもさ、上には上があるってことを知ることはいいことだよ。だからその後に自分は何ができるか、何を活かすかって考えるところが大事だと思うんだ。
アザリー飯田の未来のこと
橋本/この前、海外のニュースで、日本では高校サッカーの試合に5万人もの観客が入るって驚きの報道があって…
上沼/(日本の)サッカーって、下からも上までシステムがちゃんとしてるので、モデルがスペインとかドイツなので。ピラミッド型な組織ができているんです。これがすごいんです。
…アザリー飯田も10年を越えたあたりから、下を育てて、ちゃんとしたクラブにしていかないと続かないぞと思うようになりまして、既存少年団を吸収合併したんです。
黒田/その少年団からプロ出てるんですよ。
上沼/3年間頑張ったね。
黒田/僕の知り合いでも、大学の先輩でプロになった人がいるんですよ。6年間やっていましたね。
橋本/本当に厳しい世界。何のスポーツもそうだけど。
上沼/本人の能力はもちろん重要ですけど、やっぱり運っていうか、出会いとか環境も大事ですね。例えば塚(塚本)は本当に冗談抜きで、すごい能力があるんだけど、もし環境が違っていたら…大学でも大活躍っていうくらいの能力の持ち主だと思っています。
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岡本/少年団を吸収合併してその後はどんな感じに?
上沼/はい、10年やって少年団を吸収して、そして中学生をやって、女子を作って、順番に育て上げるカテゴリーを積み上げていくっていうのを考えて、その後に持続させるために法人化したっていう流れです。僕が死んでも続いていく道筋をつける…ブラジルでもそういうクラブが多いんで。
宮下/学ばれたんですね。そういうのは行ってみないとわかんないですよね。
上沼/ええ、…ブラジルにも飯田みたいな規模の町がいっぱいあって、それぞれの町にクラブがあって愛されてるんですよ。市民が応援してて。でもメジャーなクラブも…飯田で言えば近くの名古屋グランパスや松本山雅も応援しつつ、地元のクラブも両方っていう感じです。
一同/なるほどー
宮下/そうは言っても上沼さん、まだまだ生きて…(笑)ですけど、次はどんなことをしたいと?
上沼/そうですね、次は高校生(カテゴリー)を作ってみたいです。
岡本/ユース(U18)っていうやつ?
上沼/そうです。そこを作らないと社会人に繋がらないので。途切れちゃう。高校に通いながらトップチームに昇格というシステムを。学校の部活が縮小してるんで。
宮下/と、同時にJFL昇格を目指して、全体のレベルを上げるっていうことですね?
上沼/はい、そうですね!
橋本/今後はスポーツを理解する行政の力も必要だね。
上沼/はい、本当にそう思います。僕が思ってるのは、地元の選手が活躍できる場を作りたいので、地元の選手のレベルを上げてJFLで戦えるようにしたいんです。
橋本/底上げしたいよね。
決めるのはキャプテン?!
岡本/上沼さんはクラブを率いる会長であり、現場では監督であり、選手でもあるんですよね?
上沼/はい、そうなんですよ。
黒田/沼さん(上沼さん)シニア(カテゴリー)なのに県リーグトップチームってすごいんですよ。
宮下/やっぱり(監督兼任だから)「代打オレ!」的な?
上沼/いや、決めるのはキャプテンなんで。僕じゃないんです。
一同/えーっ‼‼?
宮下/監督が決めるんじゃなく?
「おいおい、(キャプテン)ちょっと来い」と。「今日の俺のアップを見たか? 俺を使わんと?」…という…?
一同/(爆笑)
上沼/僕も調子いい時、出たいんですよ(笑)
黒田/その話面白いなあ。
僕も、今日サイドバックおらんし(*黒田さんはGKもフィールドもこなす二刀流!)…俺かもしれんなと思って…スタメン出たら10分で体力終わっちゃった(笑)。なので後半の最後の10分に出していただいていたんですよ。
…なんでスタメン取りたいかっていうと、最初に写真撮るんですよ。僕、絶対写りたいんですよ。かっこいいじゃないですか。僕、ほぼ写ったことないんですよ(泣笑)
一同/体力〜!(笑)
橋本/もし良かったらさ、日程分かれば応援ツアー組んだら面白いんじゃない? 美味しいものも食べれるし観光もあるしで。
一同/いいですねー!
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…と話はこの調子でまだまだ続きましたが今回はこの辺りで。地元のクラブと同窓生の更なる活躍を期待して応援していきましょう!
(HP担当/岡本 恒和)