令和5年度 探究学習発表会に出席して

 去る3月21日(木)、令和5年度  探究学習発表会が飯田文化会館  大ホールにて行われ、同窓会からは正副会長4名が出席し、とても楽しく感心しながら聞かせていただきました。ありがとうございました。来賓として佐藤健飯田市長にもお越しいただいておりました。

 この探究学習発表会は、今年度から学校をあげて2年生を対象に取り組んできた「探究学習」の過程・成果発表会です。今回発表した10の団体・個人は、学校発表会を見た生徒と先生方から選ばれた生徒たちでした。

 仮説をたて検証、考察していく過程の構成力、文献やアンケート、現地調査等の取材力、教科で学習してきた応用とも言える「グラフ」を使用してわかりやすくまとめられたスライド、聴く人を惹きつける話し方、そもそも私は知らなかったことに対するテーマ設定…など、感嘆に値する発表でした。

 生徒たちは、約1年をかけて自ら探究テーマを設定し、学業や部活動、生徒会活動と両立させながら探究活動を行なってきたそうです。生徒たちの努力はもちろん、指導に当たられた学校の先生方、講師の先生方はじめ多くの地域の皆さまのお力添えの賜物です。感謝申し上げます。

 1年生も来年は自分たちの番だと良い勉強になったと思います。佐藤飯田市長と下井一志校長先生も仰っておられましたが、今回の先輩の探究学習をさらに積み重ね、高めていって欲しいと思いました。

 以下に10の発表タイトルと、はなはだ稚拙ではありますが私の個人的な感想も記してみたいと思います。

(HP担当/岡本恒和)

スケジュール
〈第1部〉
◉発表1「世代別必要な栄養素」
◉発表2「血液型と性格の関連性について」
◉発表3「なぜ日本には昼寝制度がないのか」
◉発表4「飯田弁を残すために私たちができること」
◉発表5「飯田風越高校の女子制服について」

〈第2部〉
◉発表6「排除アートは私たちにとって良いものなのか」
◉発表7「よく寝よう」
◉発表8「コミュニケーション能力の高い人と低い人の差は何か?」
◉発表9「若者から見る飯田市の魅力」
◉発表10「ストリートギターを松川に」

◉発表1「世代別必要な栄養素」

 必要な栄養素について「世代別」という着眼点が面白いと思いました。実際のデータと理想の摂取量のギャップがある現状から、不足する栄養素を補うためのおすすめのプラス一品メニューを考案、紹介がありました。食事の重要性を訴えた素晴らしい発表でした。

 私は、“世代に応じて” という発想がなかったので、ひと通りバランスよければオッケーなのかと思っていましたが、世代によって体の状態や生活スタイルが違うし、現状足りていない栄養素を意図的にとる必要があるのですね。ふむふむ。

◉発表2「血液型と性格の関連性について」

 血液型と性格の関係性には科学的な根拠は無い、と言われているのに当てはまるなぁと思うところ、多々ありますよね?そんな疑問に“探究”してくれました。

 アンケートによれば、各血液型の特性に当てはまっていると考える人が半数以上と多かったとのこと。科学的根拠は無いはずなのに、これはやはり関係性がありそうだと考え、この矛盾を解決する為さらに探求を深めました。

 血液型によって脳の働き(左脳と右脳の使われ方)に違いがある!という学説は初耳で、大変興味深く聞かせてもらいました。使う脳が異なれば思考や判断も異なってくると考えられるんだと。なるほど。また、“思い込み”(バーナム効果、確証バイアス、予言の自己成就など)により無意識に血液型の特性を信じ込んでしまうと考えられるとも。

 ひとつの事柄を調べたら新たな疑問が湧き、その解決に向けさらに探求を深めるという姿勢が素晴らしい発表だったと思いました。

◉発表3「なぜ日本には昼寝制度がないのか」

 アンケートの結果、ほぼ毎日授業で寝ている生徒が多いことが判明したそうです。思い起こせば、私も…😅

 海外や国内の高校の事例を調べ、校内でのアンケート結果からそのメリットとデメリットを考察し、昼寝制度(シエスタ)の具体的スケジュールを提案してくれました。(私の場合はお昼のあとに、真夏以外は諸条件が整えば散歩と、昼寝の時間をとることにしています。)ぜひ実験的にでもまずは飯田風越高校から!やってみたら良いと思いました。

◉発表4「飯田弁を残すために私たちができること」

 冒頭、飯田弁の挨拶から始めてくれました。「いただきました」「うら」「机を吊る」「らんごく」などなど…私も飯田弁、大好きです。自作の “飯田の方言メモ手帳”、りんごのデザインが施されたかわいいものでした。使いたい!

 飯田弁は浜松あたりの遠州弁や愛知県東部の三河弁と似ている特徴がある、とのこと。私は街道や天竜川で古から繋がりが深かったのだろうと想像しました。調査の結果、年代によって飯田弁の認知度の違い、好感度にも差があり実際に使っている人が少ないことがわかりました。もっと意識して使っていこうということは地域内外の交流など、活性化に繋がっていくことになるかもしれないですね。

 以下余談ですが、私が上京したての頃、標準語だと思って、というか体に染みついていた飯田弁が出た時の思い出の筆頭は「行ってきました」です。すぐさま「お務めご苦労様でした!」と返されました(笑)寮に帰ってきた時に同部屋の友達に言われた言葉です。他にも方言にまつわる話は尽きませんね。長野県出身の先生が「ずく出してな〜」(飯田に限らず長野県内の方言ですが)と仰っていましたが、ほとんどの他都道府県出身の学生は意味不明だったことでしょう。

◉発表5「飯田風越高校の女子制服について」

 72年の歴史ある飯田風越高校の女子制服(セーラー服)。この制服に憧れて入学を希望する生徒もいる一方で、アンケートの結果、特に夏服について生地とデザインの改善を求める声が多かったそうです。それらを踏まえ、新たな夏服デザインの提案もありました。

 時代と共に変化することは世の常です。多くの意見を聞いて、良い伝統は受け継いだ上で、改善に向けて活動を続けていってほしいと思いました。

◉発表6「排除アートは私たちにとって良いものなのか」

 皆さまは “排除アート” というものをご存知でしょうか?

 私は “排除アート” という言葉をこの日、初めて聞きました。“排除アート” とは犯罪やマナー違反、建造物の破損を減らすために使用方法を狭められるようにデザインされたもののこと、とのこと。問いのテーマ中の「私たち」と「良い」とは何かを定義してから考察を進めました。

 冒頭、2脚のベンチの写真がスクリーンに映され、「どちらが排除アートだと思いますか?」と問われました。それは飯田の辺りで普通に見かけるベンチと、ベンチ中央辺りに手すりが備わっているものでした。発表を聞いていく中でどちらが排除アートなのか分かりました。このベンチの場合、手すりがあると一人が寝そべることはできませんし、複数人が寄り添って座ることも荷物を置くこともできません。

 東京、名古屋、神戸、宮島、飯田で現地取材を行い、その数を比較。都会(人口密度が高い)ほど多く、飯田は今回調べた範囲の限りではゼロでした。アンケートの結果、排除アートの評価については賛否両論あったとのこと。自らも使用してみて考察し、排除アートを活用する以外の、その目的達成のためのアイデア提案もありました。さらに多方面から探求してみたいとのことで、素晴らしい発表でした。

 将来、リニア中央新幹線が開通し飯田に駅ができて、多くの県外の方々が来飯することになった折にどうしていくべきか、継続して考えていくテーマだなと感じました。

◉発表7「よく寝よう」

 えっ!睡眠不足で頭髪が抜ける!とは。「一に睡眠、二になんちゃら三になんとか…」と昔から言われますが、私もよく寝るようにしたいと思いました😌免疫力の低下も起こるとのこと、やっぱり質の良い睡眠は大切ですね。

 より良い睡眠を取るための条件を調べ、それを実践、比較した結果報告と、壇上から客席側に降りてのインタビューもあり、話し方が上手でとても楽しい発表でした。

◉発表8「コミュニケーション能力の高い人と低い人の差は何か?」

 コミュニケーション能力(コミュ力)の差は何が原因なのか、またコミュ力を高めるにはどうしたら良いのかを、実体験を元に考察されました。普段の生活の中でコミュ力についての関心の高まりがあるのですね。

 相手の話をよく聞き、想像力を働かせて思いやりを持てるようになったり、自分の気持ちや考えを伝える力を養うことは大切なことだなと思いました。

◉発表9「若者から見る飯田市の魅力」

 現状の調査から始まり、高校生からの視点での飯田市の魅力の掘り起こし、素晴らしい発表でした。「都会にあるものは無いけど、逆に自由に描けるキャンパスがあると捉え、若者がチャレンジできる土壌がある」んだと。ないものねだりではない発想が頼もしく、飯田市のこと、地域のことを考えてくれていてとても嬉しく思いました。

 インスタもさらに活用して、これからもどんどん発信していって欲しいです。飯田市(飯田下伊那地域)の未来が楽しみです!

◉発表10「ストリートギターを松川に」

 今回、生徒の皆さんに教えていただくことが多くて、この “ストリートギター” という言葉も私は初めて知りました。

 松川中学校の音楽の授業ではギターを習うそうです。松川町にストリートギターが置いてあって誰かが上手く弾いていたらかっこいいな!すごいな!そんな感動のあるまちにしたいなという気持ちから始まって、りんごの木でギターを作ったり、発展して周りの人達を巻き込んでの新たな活動の広がりが見られたりと、とても魅力的な発表でした。これからが楽しみです。

南信州新聞 2024年3月23日掲載